胃潰瘍、十二指腸潰瘍とピロリ菌

胃潰瘍や十二指腸潰瘍は消化性潰瘍といわれています。胃や十二指腸壁が胃酸で消化されて傷ついた状態になることがあります。胃酸の胃壁への攻撃と胃の壁を守る防御機能の均衡が破れて潰瘍が起こると思われてきました。しかし最近は、胃の中のヘリコバクター・ピロリ菌という細菌が潰瘍の発生や再発に関わっていることが明らかになってきました。



胃潰瘍、十二指腸潰瘍とは

胃のイラスト

胃酸といわれるように胃液は、とても強力な酸でできています。自分の出した胃液から胃壁を守るために胃は粘液を分泌しています。

何らかの原因で、胃酸の胃壁への攻撃と、胃の壁を守る防御機能のバランスが崩れると、自分の胃酸によって自分の胃壁が犯されてしまいます。

軽いうちは、 粘膜楽天 の表面が少しただれる程度ですが、進行すると粘膜に穴があいて、その下の筋層にまで達し、もっとひどくなると穴が胃壁を突き抜けてしまうこともあります。

十二指腸壁も胃壁の場合と同様になり、この場合は十二指腸潰瘍になります。

胃潰瘍、十二指腸潰瘍の症状

胃潰瘍や十二指腸潰瘍の症状は空腹時のみぞおちの痛みが一般的です。嘔吐や胸やけ、腹痛、食欲不振、腹部の不快感や背中が痛くなることもあります。

傷が深くて、胃の血管から出血すると、大便が黒くなったり、血を吐いたりします。まれに痛みを伴わない場合もあります。何十年も前の会社勤めの頃、同僚で胃に穴が開くまで気が付かなかった人がありました。

胃潰瘍、十二指腸潰瘍の原因

急性の潰瘍は、急なストレスや直前に口にした痛み止め、解熱剤、ステロイド、抗生物質、感冒薬や刺激性の食物やアルコール等によって起こります。

慢性の潰瘍は一般的に潰瘍症といわれるもので、下記のような胃酸の胃壁への攻撃と、胃の壁を守る防御機能の乱れやピロリ菌を原因とするものです。

胃や十二指腸はとてもデリケートな臓器です。精神的なストレスだけでも不調になるものです。もちろん、アスピリンや抗生物質等の薬剤の長期服用等によって、粘膜の血液循環が悪くなり、粘液・粘膜の働きが低下して潰瘍になることもあります。

最近の定説では、胃の粘液の中に生息しているヘリコバクター・ピロリ菌という細菌が尿素から作り出すアルカリ性のアンモニアによって、粘膜が刺激を受けて胃潰瘍の下地となることがわかってきました。また、胃ガンはピロリ菌の影響が大きいといわれています。

胃潰瘍、十二指腸潰瘍の診断

症状だけから診断することは難しい場合が多く、内視鏡(胃カメラ)による診断が必要で確実です。ついでにヘリコバクター・ピロリ菌の検査もできます。

胃潰瘍、十二指腸潰瘍にはガンと似たものもあるので、粘膜の一部を取って調べる病理検査(内視鏡検査)をします。胃潰瘍、十二指腸潰瘍は軽いうちは治りも早いので、胃や腹部に異常を感じたら、できるだけ早く消化器内科を受診しましょう。

胃潰瘍、十二指腸潰瘍の治療(ピロリ菌の除菌)

胃潰瘍、十二指腸潰瘍の治療は、昔の酸を中和する制酸剤しかなかった時代では安静と食事療法が治療の基本でした。

その後、胃酸の分泌を抑制する薬として登場したのがH2ブロッカーで、次にプロトンポンプ阻害薬 (PPI)が登場しました。潰瘍を治すだけならこれらの薬を服用するだけで簡単に治るようになりました。

これらの薬の他に、粘膜を保護する薬や血流を高めたりする薬があります。これらの薬を飲み始めると、すぐに痛みの症状は治まります。症状が取れても、薬を止めてしまうと潰瘍は治りません。

これらの薬を一定期間服用すればたいていの潰瘍は治ります。しかし適当に服薬を止めると再発する可能性が高いのです。場合によっては一生飲み続けなければならないこともあります。

まさに私の場合がそうでした。私は25才頃に何度も十二指腸潰瘍になり、医師から仕事を変えるか、一生薬を飲み続けるように言われました。

その後、胃の中のヘリコバクター・ピロリ菌を除菌することで、潰瘍の再発を抑えられることが明らかになってきました。私は1999年2月にピロリ菌を除菌して以来、十二指腸潰瘍とは無縁になりました。

医療機関でのピロリ菌の除菌(除去)

除菌治療は抗生物質等を飲むだけです。胃酸の分泌を抑制するプロトンポンプ阻害剤(オメプラールやタケプロン)と抗生物質のアモキシリンとクラリスロマイシンを1~2週間飲む3剤併用療法です。

最近はこれらの抗生物質に対する耐性菌が出現して除菌に失敗することもあるようです。また決められた量や決められた時期に薬を飲まなかったりとか喫煙も除菌に失敗する原因のようです。除菌の成功率は90%程度です。

待望のピロリ菌の除菌(除去)に健康保険が適用されました

2000年11月よりピロリ菌の除菌に健康保険が適用されるようになりました。大変喜ばしいことです。胃カメラも飲む必要がないとの事です。胃腸の不調な方、口臭のひどい方等は、かかりつけの医師に相談してみて下さい。

胃の中にピロリ菌が居るかどうかを検査する方法

内視鏡(胃カメラ)を使って行なう方法

まず内視鏡(胃カメラ)を使って胃の中から胃の組織の一部を取り出します

■培養法----培養してピロリ菌が居るかどうか調べる

■鏡検法----顕微鏡でピロリ菌を探したり、胃粘膜のピロリ菌による異変を調べる

■迅速ウレアーゼ試験法----PHの試験薬により、アンモニアの有無を調べる

これらの検査は胃カメラを使う事や培養に時間がかかるのが欠点です。

内視鏡(胃カメラ)を使わない方法

■尿素呼気試験法

  1. 同位元素の炭素13Cで標識された尿素を水と共に飲む
  2. 約20分後に呼気を採取する
  3. 呼気の中の同位元素の炭素13Cで標識された二酸化炭素の存在を検査する

この方法はピロリ菌が尿素を分解してアンモニアと二酸化炭素を作り出すウレアーゼという酵素を持っているのを応用したものです。患者の負担が小さく、確度も高い方法です。除菌後の検査に最適です。

同位元素の炭素13Cは普通の炭素12Cに比べても放射性を持つ訳ではなく安全です。自然界にも約1.1%の割合で存在しています。

■抗体検査法

血液や尿からピロリ菌に対する抗体の有無を調べる

この方法はピロリ菌が居なくなっても暫くは抗体反応が出るので、除菌後の検査には使えません。

ヘリコバクターピロリ菌とは

ヘリコバクターピロリ菌(Helicobacter pylori)は人間の胃の中に住んでいる細菌です。らせんを意味する helico バクテリア(細菌)を意味する bacter から成っています。

従来、胃の中は強い胃酸のため無菌状態であると考えられていました。しかし、この酸を自ら作り出したアンモニアで中和し胃の粘膜に住みつくヘリコバクターピロリ菌の存在が知られるようになりました。

日本では約6000万人がピロリ菌に感染しているといわれています。日本人の50歳以上の70~80%の人がこの菌に感染しているといわれています。

LG21ヨーグルトのピロリ菌への効果

胃の中のヘリコバクターピロリ菌を直接殺す、LG21という乳酸菌が発見され、それを元に作ったヨーグルトが明治乳業から発売されています。LG21ヨーグルトはピロリ菌には、すばらしい効果があるようで、私の家族も口臭が消え、舌がきれいになり、胃腸の調子も大変良いようです。ピロリ菌については別にページを作っていますのでそちらもごらんください。

胃潰瘍、十二指腸潰瘍の予防